Historical street in Omori-cho, Shimane Prefecture

サステイナブル観光の模範となる場所:島根県 大森町へ

遺産保存と観光の両立を目指す島根県 大森町の歩みを探る

観光庁事業のコーチング、そして有識者として、島根県にある大森町を訪れました。石見銀山に隣接するこの歴史的な町は、持続可能なユニークな地域開発に取り組んでいます。今回は、この町の歴史と伝統を守りながら、町を活性化させようと奮闘する大森町の人々についてお話ししたいと思います。「文化観光」がどのように行われているのか、サステイナブル観光とはどんなものなのか。考えるきっかけを与えてくれるでしょう。

過疎化が進む現実: 大森町の生き残りをかけた戦い

島根県 大森町は過疎化が進んでいる町でありながらも、400人の住民が商業化に流されることなく、町の歴史的風格を守り続けています。石見銀山遺跡の世界遺産登録を契機とした観光ブームにより、町は観光客の受け入れと歴史的遺産の維持という両面でチャンスと課題という両面を抱えてきました。しかし、世界遺産登録による観光効果が年々薄れてきており、地域が目指すべき観光振興の方向性についての示唆が求められています。

バランスを取るということ: 大森町における地域生活と観光

私は今回、大森町の人々が地域の持続可能な未来を確保しようとする情熱と決意を目の当たりにしました。大森町は石見銀山が世界遺産登録されたことによって、地元の住民がオーバーツーリズムの危険性を痛感するほどの多くの観光客が流れてきましたが、それと同時に歴史的景観保全と、町にあるまだ使われていない多くの建物をリノベーションするための観光から得られる収入も必要であるという現実にも直面しています。

地元の職人から学ぶ: 大森町の文化体験の真髄に迫る

今回の訪問では、竹板と天然粘土で編みこんだ伝統的な壁を制作している、地元の職人さんに出会うことが出来ました。このような偶然の出会いは、この地域を訪れるほとんどの旅行者が経験できないことであり、旅行者が求める地元の人々との一期一会的な交流と言えます。さらにこの地域の工芸品は、地域文化を持続可能な観光の取り組みに取り入れるために必要不可欠なものと言えます。

群言堂: 大森町の活性化と地域振興の起爆剤となる場所

近年、大森町の活性化を支えてきた会社があります。大森町に本社を置く、繊維・ファッション関連企業「群言堂」です。群言堂の存在によって若いクリエイティブな人材が集まり、活気が生まれ、地域経済が活性化しています。また、他郷阿部家(たきょうあべけ)のような宿泊施設は、地元の伝統と現代の素朴な感覚を見事に融合させ、訪れる人にユニークな体験を提供しています。

おわりに:持続可能な地域づくりのモデルとして

今回訪れた大森町は、地域の遺産を守りながら責任ある観光を促進する、地域主導の取り組みの可能性について改めて考える貴重な機会を与えてくれました。私は観光開発コンサルタントとして、大森町の住民の献身と創造性、特に町周辺の美化活動に非常に刺激を受けました。彼らの歩みは、本物の文化体験を促進することで持続可能な地域開発を目指す他の地域にとって、模範となるものだと言えます。

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